

アスリートのパフォーマンスを高め、チームの勝利に貢献する仕事
JFAアスレティックトレーナー
SAMURAI BLUE(日本代表)トレーナー
菊島 良介さん
公益財団法人日本サッカー協会(JFA)に所属するスポーツトレーナー。サッカー日本代表チームに帯同しながら、選手のコンディションを整えます。試合はもちろん、日々の練習にも立ち合いながら、選手が最大のパフォーマンスを発揮できるよう、身体の調整やケアを行います。チームの勝利をメディカルの面から支えるスペシャリストです。
―どんな仕事?
激しい運動をするアスリートの
身体をサポートする仕事
サッカー選手のプレーのパフォーマンスを最大限に上げられるよう、メディカルの知識をもって体の調子をよくしてあげることが主な仕事です。日本代表チームと行動を共にしながら必要に応じてマッサージやストレッチ、エクササイズなどのケアを選手に施してコンディションを整えていきます。資格を生かし、鍼灸や指圧といった治療を行うこともあります。自然と選手と近い距離にいることが多くなり、関係も深くなりますが、施術ひとつ、コミュニケーションひとつで選手の身体や心に影響を与えてしまうため、専門知識のみならず、繊細な心配りも必要となる仕事です。

―仕事をするうえでのこだわりは?
選手によって答えはそれぞれ
何を求めているのか正しく把握すること
選手の個性や状態を見極めて、最も適切な方法でサポートをすることが私のこだわりです。選手の身体がどういう状態なのか、選手自身は身体をどうしたいのかを読み取り、選手が求める答えを提案することが大事だと考えます。コミュニケーションの方法にも配慮が必要です。例えば、痛みをあまり訴えてこない選手の場合はどのようにアプローチすると本人から情報が得られやすくチームにとって最善なのかを考えて接していきます。言葉だけでなく普段と何か違う様子がないか、表情やちょっとした動きから注意深く観察することがポイントです。
―今の仕事の魅力とは?
チームと密にかかわりながら
勝利へ貢献できた喜びを味わえること
選手と監督、コーチ、スタッフと常に行動を共にしながら、ひとつチームという意識を強くもっています。たくさんの人の期待を背負って、激しい戦いに身を投じる選手の奮闘にチームの一員として貢献できるならば私はうれしく思います。もちろん、チームが勝利を手にした瞬間は何物にも代えがたい幸せです。2018年にロシアで開催されたFIFAワールドカップでの日本チームの大躍進を共にできたときは忘れられません。選手と一緒になって勝利をよろこべることがこの仕事の醍醐味です。

―自分の好きをどう仕事に生かしていますか?
選手の大切な身体を預けてもらい
役に立つ瞬間にやりがいを感じる
人の身体に触れて、痛い場所を癒してあげる。それが私の好きなことです。ドクターのチェックのもと、手を尽くしてあげて、選手の痛みや辛さ、苦しみが少しでもなくなるとうれしく思います。万が一でも誤った処置をしないよう、トレーナーには正しい知識が不可欠です。鍼灸師・指圧師の国家資格や、スポーツトレーナー最難関の資格であるアスレティックトレーナーの資格を取得しています。身体にまつわる最新の情報を学ぶことも私のライフワークであり、楽しみにもなっています。

練習や合宿、大会があるときはトレーナーも必ずそばにいて、選手や監督、コーチと同じスケジュールで動きます。寝食を共にする、まさに同じ釜の飯を食う仲間。長い時間を一緒に過ごしながら苦楽を共にします。

トップ選手は自分に必要なコンディショニングをそれぞれ自分で選んで行っています。レベルの高い選手ほど、セルフコンディショニングの勉強にも熱心です。正しい知識で身体を管理できるよう、選手に教えてあげることもトレーナーの大切な仕事です。

密な会話を交わす選手もいれば、考えをすべて言葉にはしない選手もいます。選手のコンディションを把握するために「普段と違うところはないか」を見抜くことが大切です。

選手にはアプリで体調の具合を毎日7~8項目チェックをしてもらいます。結果はトレーナーにも通知されるようになっていて、選手のコンディションを読み解くヒントにしています。

「よくなったよ、ありがとう」選手がよろこんでくれることが、自分自身のよろこびです。

―今の仕事につながるきっかけは?
高校生のころに偶然テレビで見た
有名なプロ野球トレーナーの姿
僕自身も小学校生のころから中学、高校とサッカー部に所属し、プレーに情熱を傾けていました。しかし実力はそこそこ。自分がプロ選手になることはないだろうと、早いうちから自覚をしていました。それでもサッカーが大好きだったので、将来は何かサッカーの仕事に携われたらいいなと考えていました。そのようなタイミングで、高校2年生のころ、たまたまテレビでプロ野球選手のトレーナーの姿を観ました。当時はまだ、コンディショニングという概念が今のようには確立されておらず、選手の傍らでコンディション調整をする姿は珍しく見えました。「具体的にはどういう仕事だろう? もしかしてサッカーの世界にもトレーナーがいるのかな。もしそうなら、自分もやってみたい」と思ったことがきっかけです。自分自身もサッカーをしていたので、この仕事はチームには欠かせない存在だなと直感的に理解できました。プロ選手は無理かもしれないけれど、この仕事ならできるかもしれないと思い、将来の目標になりました。
高校2年生
テレビでプロ野球のトレーナー立花龍司さんの存在を知る。「サッカーのトレーナーになりたい。進路はどうしたらいいか?」と体育の先生に聞いたところ体育大学への進学を勧められる。
大学1~4年生
体育大学へ進学。大学のサッカー部にトレーナーとして所属し、選手をサポートしながらトレーナーのイロハを学ぶ。全国高等学校サッカー選手権出場高校のトレーナー業務を経験し報酬も獲得。
大学卒業後
先輩に「トレーナーとして食べていきたい。今後はどうしたらいいか?」と相談。専門資格を保有していると有利と聞き、鍼灸の専門学校の夜間コースへ。昼は町の整形外科でリハビリ助手として稼ぐ。
社会人1~2年め
修業時代に突入。社会人ラグビーやJリーグチームのトレーナー研修の経験を積む。「いつかはサッカー日本代表に帯同するスポーツトレーナーになりたい」と周囲の人にも伝えてチャンスをうかがう。
社会人3~6年め
Lリーグ・東京電力マリーゼの帯同トレーナーに就任。3シーズン帯同する。その後Jリーグ・ジェフユナイテッド市原・千葉トップチームの帯同トレーナーに就任。3シーズン帯同する。
社会人9年め
JFAのトレーナー職の公募に挑戦する。無事に合格を果たし、サッカーチームを支えるスポーツトレーナーとして働きはじめる。現在までワールドカップも2大会経験。

自分の夢を公言!もらった言葉は自分なりに考えて解釈をしていました。
―仕事を通してこれから叶えたい・考えていきたいことは?
お互いの知見を生かしながら
チームとしての力を高めるには?
まずは目の前にいる選手の痛みをきちんととってあげられる人間になりたいと思っています。そのうえで、今後はトレーナーを含むメディカルスタッフの組織を引っ張っていけるような存在になりたいです。メディカルスタッフはそれぞれ専門分野をもっています。選手との関係の深さやかかわり方も人によって違ってきます。選手とスタッフの相性もまた違います。ピッチに立つ選手のように、舞台裏のスタッフもそれぞれの良さを生かしながらチームとしての高みを目指していきたいです。

―その目標を実現する上での課題は?
会話ひとつでもチームにとっての
最善を考え尽くす
トレーナーはあくまでチームの勝利のために存在しなくてはいけないと思っています。トレーナー同士も連携をして力を最大化したいです。例えば私がある選手の不調に気づいたとします。ただ、その選手が自身の不調を誰にでも打ち明けるタイプではない場合、私より話しやすいであろうスタッフに頼んで選手の様子をさりげなく伺ってもらうようにします。些細な判断もおざなりにせず、チームの価値を発揮していく。そういった采配を正確にできるようにしたいと考えています。
せっかく目指すなら国内最高峰のチームのトレーナーになりたいと思っていました。そして選択の場面になるたびに「そこに近づくには?」と繰り返し考えてきました。まずは自分が選べることからで大丈夫です。一歩ずつ近づいていく選択をしていきましょう。
この仕事人と関わりが深い 学問 は …「 スポーツ学 」
「 スポーツ学 」の文理度合い
※仕事にはさまざまな学問の知識がかかわりますが、その中で代表的な学問を表示しています。