

薬剤師の心の声を生み出して聞く仕事
株式会社カケハシ コミュニティマネージャー/薬剤師
浅川 裕香子さん
薬剤師の業務を助けるITプロダクトを作る会社で、薬局や薬剤師さん同士がつながるコミュニティを企画・運営しています。薬剤師さんのリアルな声を拾えるよう、薬局の未来を考える仲間として薬剤師さんに寄り添うことを心がけています。現在は長野県小布施市に移住し、リモートワークで働いています。
―どんな仕事?
ITプロダクトの改善のカギになる
ユーザーの本音を引き出す仕事
調剤薬局内の仕事をサポートする「Musubi」というプロダクトを開発・販売する会社で働いています。「Musubi」に服薬の記録を残すことはもちろん、健康のアドバイスを表示させて患者さんの服薬指導のサポートをしたり、経営管理に不可欠な各種データの見える化にも役立てていただいています。利用されるのは薬剤師さんや薬局の経営者さんです。利用者さん同士が交流できるコミュニティの運営を行っています。コミュニティ内で聞こえる声を開発のヒントにしたり、コミュニティを通して「Musubi」の継続的な利用を促したりしていきます。

―仕事をするうえでのこだわりは?
薬剤師さんに徹底して寄り添っていき
コミュニティに愛着を持ってもらうこと
利用者の本音を聞くことで、「Musubi」をよりいいものにしていけます。でも見知らぬ相手に本音を明かすことは難しいものです。心の内側の声を教えてもらうには「Musubi」そのものを好きになってもらうことが一番だと考えています。薬剤師さんが思わず参加したくなるセミナーや楽しいミートアップを主催することで皆さんに「このコミュニティはためになるし、居心地がいいな」と感じてもらいたいです。私のことも仲間のひとりだと思ってもらえるような対話を心がけ、オンラインやリアルな場を介して、心が通った信頼関係を築くことにこだわっています。
―今の仕事の魅力とは?
主体的なアプローチで私たちも知らない
隠れた需要の種を発掘できること
ITの世界ではユーザーの行動履歴を数値にし、声として表すことができます。客観的な数値をすぐに得られるのはメリットです。しかし、それだとユーザーのすでにある声しかわからないというデメリットがあります。データで声を拾う方法はユーザーの動きを待ち「ここをクリックした」「このページをよく見た」という過去の行動を拾う手法です。一方、コミュニティ運営においては「実はね…」と、ポロっとこぼれる心の声をどうすればたくさん引き出せるか自分で考えて実行していけます。社内ではまだ誰にも見えていなかった隠れた需要の種を発掘できるのがこの仕事の醍醐味です。

―自分の好きをどう仕事に生かしていますか?
出会いをきっかけにモヤモヤが晴れて
行動が変わっていく瞬間を見られること
人が出会いをきっかけに、いい変化が起きる瞬間に立ち会うことが好きです。現場の薬剤師さんや経営者さんは仕事のありかたに葛藤を抱えています。「もっと患者さんと向き合いたい」「地域の健康をサポートする活動に力を入れたい」と願っても忙しすぎて難しいからです。しかし、私たちの会社のプロダクトを活用して現状を変えようとする方が集まるコミュニティは前向きなエネルギーに満ちています。コミュニティで人と出会い、影響を受けてポジティブな行動を起こす。そして相互に志を高め合っていく。そのような光景を生み出せるこの仕事にやりがいを感じています。

「Musubi」は薬剤師の仕事をデジタル化する便利な機能が満載のプロダクト。「Musubiをどうやって使うとよさそう?」と、薬剤師同士で相談しあう会話や「ここが使いにくい」という不満にはプロダクトを改善するヒントが転がっている。

コミュニティの魅力を伝えるセミナーを開催し、参加を促すこともしばしば。カケハシのコミュニティイベントでは専門的な悩みも気軽に解消できると人気。

「“こんなコミュニティを待っていた”と言われてうれしかったです」と浅川さん。満足や共感、よろこびという、目に見えないけれども一度現れるとずっと続く成果を長い時間をかけて醸成していくことがミッションだ。

自宅だけではなく、小布施駅から2kmほど離れた場所にあるコワーキングスペース「HOUSE HOKUSAI」も仕事場のひとつ。管理人さんとはすっかり仲よしになり、地元の情報を教えてもらうなど、楽しい会話で息抜き。

薬剤師の仲間のひとりとして、つながりからよろこびを生み出すのが私のやりがいです。

―今の仕事につながるきっかけは?
家族の影響もあり医療職を目指して大学受験
進学した薬科大で人生を変える経験に出会った
家族の期待があり、医学部を目指していました。しかし「医師になった先にやりたいこと」が不明確だったため、勉強にはどこか一生懸命になりきれませんでした。結果は不合格。合格していた薬科大に進みました。でも大学では素晴らしい経験が待っていました。世界中の薬学部生と交流する活動を通して、医療や薬剤師の未来について熱い議論を交わしたことは今でも忘れられません。卒業後は調剤薬局に就職。業務に忙殺され、理想の医療を提供できないことに悩みました。医療と世の中の関係を学びたいと思い、社会の構造がわかりそうな大手企業へ転職。営業の仕事に充実感を覚えつつ、ヘルスケアデータを扱う部門へ異動。働きすぎて体を壊しかけたタイミングで現職の社長からfacebookにメッセージが。「営業ができて薬剤師のこともわかる人」を探していたそうです。ある薬剤師の方が「浅川さんがピッタリでは?」と、私のことを紹介してくれたようです。その方は私が学生団体の活動で人脈を広げていった先で知り合った薬剤師さんでした。
高校3年生
医療従事者の家庭で育つ。理数科目が得意で、偏差値の高い医学部へ進学するのが自然の流れだと感じるものの、医師になる情熱がもてないままに受験。不合格となるが、合格していた薬学部へ進学。
大学1~4年生
大学生活を始めるも、充実感には程遠い日々だが、アルバイトで貯めたお金で海外旅行をすることに夢中になる。自分で飛行機と宿を予約して行く旅を通し、自由に行動をする充実感を知る。
大学5年生
学校内で偶然日本薬学生連盟のフリーペーパーで世界の薬学生が集まる集会の存在を知る。400名もの学生が海外で集まる会に驚くとともに、自分の好きな海外と薬学がつながる予感から活動に参加。
大学6年生
薬学生の交流を企画する中心メンバーになり青春を謳歌。「薬剤師の未来とは」「薬局の本来の姿とは」と熱く議論を交わし、人脈も広がる。卒業後は先進的な取り組みを行う高知県の薬局に就職。
社会人2年め
薬局で調剤をしているだけでは薬局の未来は変わらないかもしれないと感じるようになる。大手企業の営業部門に転職。その後はヘルスケア事業部へ異動。やりがいを感じるものの多忙をきわめる。
社会人5年め~
株式会社カケハシへ入社。会社の主力プロダクトである「Musubi」のユーザーコミュニティを立ち上げる。軌道に乗せたのち、2人めの子どもを出産。復職して2021年の夏に長野県へ家族で移住を果たす。

人生における大切な要素とは、自分の生き方を自分で作る意識をもつことだと気がつきました。
―仕事を通してこれから叶えたい・考えていきたいことは?
みんながそれぞれ自分の人生を
大切にできる世界を作るには?
医療の世界にも一般企業の世界にも身を投じた結果、とにかくたくさんの人が働きすぎていると気づきました。働きすぎて健康を損ねては、元も子もありません。心身共に元気で、趣味や家族、大事な人とていねいに向き合い、未来に向けて新しいことに挑戦できるような人生を人々が歩むにはどうしたらいいのだろうと考えています。仕事は人生のほんの一部ととらえて、本当に必要な仕事だけに尽力し、余分な仕事はコンパクトに済ませる。そして自分のやりたいことをするのが当たり前の世の中にしたいです。

―その目標を実現する上での課題は?
「いつもと同じ」を繰り返さずに
自分自身に常にフォーカスしたい
人は慣れたことを続けてしまう生き物です。しかし、いきなり大きく変えることはできなくても、少し調律することは難しくはないと思っています。そして常に自分のお腹の底にある気持ちに向き合い、本当は何をしたいのかを考え続けていければいいなと思います。自分をごまかせない、勇気がいる作業ですが、やりたいことを見つけるために大事な作業です。やりたいことをやるために少しだけ行動や考え方を変える人が増えれば、みんながそれぞれ自分の人生を大切にできる世界に近づくのではないかと思っています。
「石の上にも三年」という考え方にとらわれて苦しいならば、思い切ってやめるのも手です。道がなくなると思うかもしれませんが、必ず別の道につながります。未来を心配しすぎずに好きなことに注力してください。
この仕事人と関わりが深い 学問 は …「 薬学 」
「 薬学 」の文理度合い
※仕事にはさまざまな学問の知識がかかわりますが、その中で代表的な学問を表示しています。