

高齢者の人生の質を維持して支える仕事
社会福祉法人双友会 特別養護老人ホーム つつじ山荘 ケアマネージャー
川村 大地さん
高齢者福祉の専門家として特別養護老人ホームで働いています。高齢者の生活の悩みを聞き、これからどのように暮らしていきたいのか意向をまとめて、計画を立てる仕事です。できるだけ希望に寄り添えるよう相手の立場に立ち、思いを尊重することが大切です。人の「生きる」に直接貢献するため、感謝の言葉をいただく場面が多いお仕事です。
―どんな仕事?
本人や家族、専門家の意見を聞き
高齢者の生活を支援する仕事
介護が必要となり自宅で暮らすことが難しくなった高齢者やその家族の相談を受けて介護サービスや保険の給付計画を明確にするケアプランを作成する仕事です。本人の困りごとの解消のために介護士、看護師、理学療法士、栄養士などの各専門家の意見を取り入れたり、地域のサービス事業者と連携を図る調整役も担ったりしています。施設では食事や入浴、排泄を介助するといった介護そのものに携わる時間もあります。ケア計画の作成も介護も、本人らしさを大事にしながら、できるだけ自立できるようにサポートをするのが基本の方針です。

―仕事をするうえでのこだわりは?
本当は何をしたいのかを
ていねいに見極めていくこと
私が勤務しているのは要介護認定3以上という中~高程度の介護が必要な高齢者が利用する施設であるため、認知症を患っている利用者の方もいます。そのため、例えば食事の時間に急に立ち上がって徘徊をしはじめたら「席について食事をとりましょう」と伝えるのではなく、「本人は今、何をしたいと思っているのだろうか」と考えながら声をかけるようにしています。病気で意思や記憶、表現などがコントロールできなくなっても、感情は残っています。「もしかするとこうなのかな?」と本人の気持ちを考えながらコミュニケーションをしています。
―今の仕事の魅力とは?
感謝の言葉や笑顔に触れて
貢献している実感をもてること
利用者本人や家族の方から頼っていただける場面が多く、いつもやりがいを感じています。特に「川村さんがいてくれて良かった」といった言葉をもらった時は、仕事の苦労が報われる思いです。人と触れ合う業務なので、直接感謝を伝えていただける機会が多く、人の役に立っていると実感しやすいのがこの仕事の魅力だと思います。また、以前はできなかったことが、少し訓練をしたらできるようになるなど、いい変化を目撃することもうれしい瞬間です。利用者さんのうれしそうなお顔を見ると、私も思わず笑顔になってしまいます。
―自分の好きをどう仕事に生かしていますか?
自然と聞き役にまわる性格が
相手を受容し理解する業務に生きている
古い友人からは「昔から聞き上手だよね」なんて言われます。確かに、話をするよりも、話を聞くほうが好きだなと思います。ケアプランの作成は本人の話を聞くことからはじまります。その人の過去を聞き、その人らしさを引き出せる質問をして、できるだけそのまま理解をする。そして家族や専門家など利用者本人とは違った立場にいる人の話を聞くことも質の高いケアのためには欠かせません。相手の考えや思いを受け入れられる自分の性格がこの業務に生きています。

ケアプランとは介護保険適用のサービスを利用する際に欠かせない計画書のこと。ケアマネージャーは介護や保険の専門知識を生かして支援サービスを組み合わせていく。

特別養護老人ホームが利用者の終の棲家になる場合も。施設では看取りに向かったケアも行うが1日でも長く、利用者がその人らしくいられるように、介護士らと前向きに力を合わせている。

たくさんの人の「これまで」を聞かせてもらい、「これから」を少しでも豊かにすることが私の使命です。

―今の仕事につながるきっかけは?
たまたま経験した福祉のボランティアで
利用者と祖母の姿が重なって見えた
中学の頃に、自動車整備士になりたいという友人の話に影響を受けて、私も自動車整備士を目指すことにしました。工業系の授業のある高校へ進学。でも高校2年生の時に行った職場体験を機にあきらめることになります。車両の下に潜り込みながら集中する作業が難しく、この仕事は向いていないのだとはっきりわかったからです。目標はなくなってしまったものの、とりあえず進学はしようと思っていました。不純な動機かもしれませんが入試に有利だと聞いていたため、軽い気持ちでボランティアに行ったことが今につながっています。高校3年生の時、高齢者福祉施設でちょっとしたお手伝いをしたところ、とても感謝をいただきました。帰りには「また来てね」と言ってくださって思わず感激。体が衰えた祖母の姿にも重なって見えてしまい、ここいる方たちに何かをしてあげたい、いつかここで働きたいという夢ができました。そして高齢者福祉の勉強をするために専門学校へ進みました。
高校2年生
自動車整備士の職場体験へ。過酷な環境に心が折れる。実は職場体験の以前から、手先が器用でないことを薄々自覚していたこともあり、未練を残すことなく自動車整備士の道はあきらめた。
高校3年生
さて将来は何をしようと考えつつもこれといった答えがみつからず、とりあえず内申点を上げておこうと考える。その一環でボランティア活動をスタート。軽い気持ちで高齢者福祉施設を訪問したところで将来の夢と出会う。
専門学校2年め
2年制の福祉専門学校で介護について学び、卒業時には介護福祉士の試験にも合格。実習の授業で訪問した地元の大規模な特別養護老人ホームに就職が決定する。
社会人7年め
利用者110名ほどの施設で介護業務の経験を積む。5年目には介護支援専門員(ケアマネージャー)の資格を取得。7年目からは資格を活かし、ケアプランの作成業務を行うようになる。
社会人8年め
ケアマネージャーとして利用者の相談業務に従事するも「本当にこの対応方法でいいのか」と判断に悩む場面が多く、知識のなさを痛感する。さらに高度な専門知識を身につけるべく、日本福祉大学に通信で進学を決意。
社会人10年め
子どもが寝たあと教科書を開き、通勤中の車では音声を聞きながら学ぶ。多忙ゆえ卒業が1年延びるも、社会福祉士の試験に合格。以降は相談業務にも自信をもってあたれるようになる。

実際の経験を通して向いているかどうかを考えてみました。
―仕事を通してこれから叶えたい・考えていきたいことは?
誰もが安心して暮らせる
社会にするにはどうしたらいいか?
認知症の方が地域社会から取り残されないようにしなくてはいけないと思っています。まだまだ間違った認識で認知症をとらえている方も多く、正しい理解を広げることが必要です。認知症になると何もわからなくなってしまうのだと思う方もいるかもしれませんが、そうではありません。人間としての感情はきちんと残っています。本人の意思がきちんと尊重されて安心して暮らし続けてもらえる社会をつくっていきたいです。認知症高齢者など、支援が必要な方が安心して暮らせる社会は、誰にとっても暮らしやすい社会になると思っています。

―その目標を実現する上での課題は?
若者や地域の人にも広く興味をもってもらい
高齢者福祉に巻き込んでいく
高齢者一人ひとりの方に十分に納得して暮らしてもらいたいと思っています。しかし高齢者に向けた制度には限界があり、高齢者の希望のすべてをかなえられるかといえばそうではありません。また介護業界の人手不足も根深い問題として横たわっています。高齢者が増えた現在、認知症や介護福祉の問題は誰もがいつかかかわる可能性があるものととらえてほしいです。そのために、私自身が介護施設の外に出向き、地域の方や若い方に認知症の正しい理解を深める講座を開催していくなど、今後も自分ができることを継続的にやっていきたいと思います。
「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行く、ただ一つの道」。野球のイチロー選手の言葉です。そのとおりだなと思います。未来に向けてまずは自分を正しく知ることからやってみてはいかがでしょうか。
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